初めてロングライドした話

私が趣味でサイクリングするようになったのは、結構なオッサンになってからなのですが、生活の足用に買った自転車に乗っていたら、走ること自体が楽しくなり、気づいたら趣味として乗るようになっていた、というなんとも成行き的な始まり方でした。

最初のMyサイクリング自転車
サカモトテクノ

最初は近所の川のCRを往復する程度だったのが、そのうちその隣の川のCRも走るようになり、だんだん距離が伸びて30kmくらい走れるようになった頃、「これはひょっとして湘南の海まで行けるのでは」と思うようになりました。

湘南にはどう行くのが良いのか。私は普段、車に乗らないせいで道に全然くわしくありませんでしたので、海までの道をGoogleマップで調べて計画をたてました。鎌倉街道(県道21号線)や境川CRを知ったのも、この時でした。

こんなルート(↑)を時計回りで走る計画をたてたのですけど、いま測ったら、これ、100kmくらいあるんですね。初ロングライドにしては無謀な距離だったかもですけど、当時は深く考えず、ま、行けるっしょ、的なノリでした。

出発したのは、とある夏の日でした。とても良く晴れて、空は真っ青でした。

道順はとてもシンプルなので、間違えようが無いのですけど、初めて走る道は、やっぱり少し心細く不安でした。「この道で良いんだよな…」などと思いつつ走っていると、弘明寺のあたりで、一台のローディーと信号で一緒になりました。「きっとこの人も海まで走るに違いない」とそんな気がして、なんとなく心強かったのを覚えています。

それからしばらくは、そのローディーの後ろに付いて走っていました。鎌倉街道は道幅が広く平坦で走りやすいのですが、路駐している車が多く、チョイチョイ進路変更する必要があります。そのローディーは、進路変更する時はハンドサインを出していました。

私が、ハンドサインをする自転車乗りを見たのは、その時が最初でした。それまでは、河川敷CRをメインに走っていたので、ハンドサインをやる人がいなかったのですよね。ハンドサインというものの存在は知っていたのですが、実際に目撃したのは、その時が最初でした。

そのローディーのハンドサインは、まず上体を起こし、半身をひねり、後方をチラ見しながら、右腕をおもむろに水平に上げる仕方でした。一連の動作はペダリングを止めて行われ、ゆったりとした、余裕を感じさせるハンドサインでした。もしかしたら私にハンドサインの手本を示してくれていたのかもしれません。「こうやるんだよ」みたいな。

しばらくはそのローディーの後ろを走っていたのですが、やっぱり途中から離されて、それからあとは、ずっと一人で黙々と走りました。そしてとうとう、鎌倉の海に到着しました。海が大きくてキラキラして綺麗でした。初ロングライドはその後も順調で、なんのトラブルもなく、無事終了しました。

鎌倉の海

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あれからもう、鎌倉の海まで何回も走りましたし、これからも何回も走るでしょうけど、初ロングライドに勝る感動は、もう得られないでしょうね。今じゃもう、道も覚えましたし、体も慣れましたし、自転車も速いのに買い替えたので、短時間で疲れず海まで走れますけど、それと引き換えに、非日常感が薄れ、新鮮味がなくなり、感動しにくくなってます。

時々ふと思うのですが、初ロングライドで遭遇したあのローディーは、あの時、たぶん、スピードを落として走っていてくれたのだと思います。そうでなければ、ロードバイクにルッククロスが追走できるはずがありません。おそらく、私のビギナーっぽさを察知して、面倒を見るようなつもりで先導してくれたのかなと。そしてハンドサインの仕方も教えてくれたのかなと。なんとなくそんな気がします。

あれからもう何年も経ちますけど、私のハンドサインは、あの時のローディーの仕方をソックリ真似しています。あのローディーは真っ黒に日焼けしていて、体がガッチリしていて、サイクリング慣れしていたせいか、ハンドサインまでカッコよく見えて、それで真似しています。でも、もしかしたら、本当は、あの時の感動を少しでも思い出せる気がして、それで真似しているのかもしれません。あのとき私が乗っていた自転車は、フロントシングルの6段ギアで、重くて、遅くて、そんなチャリをガシガシ漕いで、息をハァハァさせて到着した海はキラキラして綺麗で、あの気分を忘れたくなくて、それでいつも真似している気がします。

(おしまい)


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